「MEPHISTO WALTZ」

演奏:GENSOJIN
録音 2008年4月14,15日 千葉市美浜文化ホール 

1.ハンガリー狂詩曲第2番 (リスト/ゲンソウジン編)
2.ハンガリー舞曲第6番 (ブラームス)
3.スラヴ舞曲第1番 Op.46-1 (ドヴォルザーク)
4.スラヴ舞曲第8番 Op.46-8 (ドヴォルザーク)
5~8.戦争の記録~1.ベルギーにて/2.フランスにて/3.ロシアにて/4.アルザスにて (カセッラ)
9.主よ、人の望みの喜びよ (J.S.バッハ)
10.管弦楽組曲第3番~「エアー」 (G線上のアリア) (J.S.バッハ)
11.目覚めよと呼ぶ声あり (J.S.バッハ)
12.剣の舞 (ハチャトゥリアン)
13.メフィスト・ワルツ-レーナウのファウストによる2つの挿話~「村の居酒屋での踊り」 (リスト)

「ブダペストの名門、リスト音楽院に長年学んだ二人はヨーロッパ音楽の神髄を見事なまでに理解し、その驚くべきテクニック!天賦の才放つ音楽感で聴く者を熱狂させるでしょう」
イシュトヴァン・ラントシュ(ピアニスト / ハンガリー国立リスト音楽院教授)「MEPHISTO WALTZ」CD帯より
持田正樹と日南由紀子、ハンガリー国立リスト音楽院に学んだ2人のピアニストによって1999年に結成されたデュオ「ゲンソウジン」は、2005年イタリアで催された国際コンクール「イブラ・グランド・プライズ」において、デュオ部門の最高位を得たという。日本内外での演奏活動、教育活動に多忙な日々を送っているとのこと。2008年に録音されたこのCDを聴いても、たいへん高度な技術、二重奏としての完成度を掌中にしたコンビだと判る。曲目はリストの「ハンガリー狂詩曲」第2番、ドヴォルザークの「スラヴ舞曲」2曲とまずはポピュラーなところから始めるが、次の、アルフレード・カセッラが第一次世界大戦の体験から書いた「戦争の記録」4部作は、めずらしい、しかも内容のあるオリジナル作品であるだけに、特筆ものの録音と言えよう。その後はJ.S.バッハの名曲3篇、ハチャトゥリアン「剣の舞い」とつづけ、結びにリスト「メフィスト・ワルツ」を置くが、これは作曲者自編版の日本初録音ということで、また興味を惹く。演奏のほうもそれだけ気合を込めた達演が繰りひろげられており傾聴させる。先のカセッラと併せ、今後ともピアノ・デュオの好レパートリーと、その規範的ディスクを求める人たちにとっては大きな注目盤となりそうだ。2人ともに独奏家として十分に立てる器だと見るいっぽう、すでにこれだけデュオとしての一体感をかちえた「ゲンソウジン」なら、ぜひこの形での活躍を望みたい。
レコード芸術(濱田滋郎)vol.59 No.716(2010年5月号)
ゲンソウジンとはこれまたユニークな名前をつけたものだ。共にハンガリーのリスト音楽院で学んだ持田正樹と日南由紀子が1999年に結成したピアノ・デュオである。「メフィスト・ワルツ」第1番の4手連弾をメインに据え、ブラームスの「ハンガリー舞曲」、リストの「ハンガリー狂詩曲」やドヴォルザークの「スラヴ舞曲」などハンガリーをはじめとする東欧系の音楽を中心に、イタリアのカセッラやバッハ、ハチャトゥリアンなどを収録。4手連弾も2台ピアノもピアノ・デュオというが、当アルバムはすべて4手連弾である。因みに、「メフィスト・ワルツ」といえばピアノ独奏曲やオーケストラのための交響詩が知られているが、元を辿ればこの4手連弾が原曲。さて、ゲンソウジンだが、演奏の精度の高さは瞠目に値する。音色も解釈も息もぴったり。それにハンガリーで学んだ人たちらしく、ハンガリーに因んだ作品にはテンポや音色、性格作りなど、言葉や土地や風土を知っている人ならではの説得力がある。「ハンガリー狂詩曲」第2番然り。この曲はもともとピアノ独奏曲なので、彼ら自身で編曲した楽譜(原曲と同じ嬰ハ短調)を使用しているというが、ラッサンの独特な足取りと熱狂的で奔放なフリスカ、ツィンバロンの音色に似た高音域のパッセージなどなど。また、ドヴォルザークの「スラヴ舞曲」は鋭いリズムや猛烈なアッチェレランドなどが、活気に満ちた賑やかなスラヴの人々の群舞を彷彿とさせる。
レコード芸術(那須田務)vol.59 No.716(2010年5月号)
[録音評] 4手の演奏によって音域の広がりや音の厚みなどをはじめとして幅広い表現能力を得ているピアノの魅力を、その迫力から細部の表現まで十全に捉えている。変化と迫力に富むピアノ演奏を間近に聴く心地の収録で、鮮明な粒立ちのアタックと大柄な楽器らしい深い響きとのバランスも絶佳。スケール感満点な演奏を楽しませる。2008年4月の収録。<90〜93>
レコード芸術(神崎一雄)vol.59 No.716(2010年5月号)